細胞はなぜがん化するの?

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【執筆・監修】 阿部 博幸
東京キャンサークリニック理事長

医学博士
一般社団法人国際個別化医療学会理事長

いくつもの遺伝子の故障の積み重ね

細胞のがん化は、細胞内にあるDNAに書き込まれた遺伝子情報に傷がついて起こります。

がんに関連する遺伝子には、細胞を増殖させる「アクセルの役割をする遺伝子」、細胞増殖を抑制する「ブレーキ役の遺伝子」、そして傷ついた遺伝子を「修復する遺伝子」があります。
通常、細胞の遺伝子が傷つくと修復遺伝子によって修復されたり、その細胞自ら自然死(アポトーシス)を遂げることもあります。また、免疫細胞によって排除されることもあります。
しかし、遺伝子が修復されることなく、またアポトーシスすることもなく、遺伝子が傷ついたまま更に別の遺伝子が次々に傷つき故障していき、ついにがんの守り神と言われている「p53遺伝子」が故障すると、がん発生へと進展してしまうのです。

このように、がんは1つの遺伝子の故障によるものではなく、いくつもの遺伝子の故障が段階的に積み重なることで発生します。これは多段階発がん説と言われ、1990年にジョン・ホプキンス大学のフォーゲルシュタイン教授らによって唱えられました。

遺伝子が傷つく原因は?

細胞のがん化はいくつもの遺伝子の故障が重なって起こるとお話しましたが、それでは、どうして遺伝子が傷ついてしまうのでしょうか。

原因1.活性酸素

一つには、活性酸素が遺伝子を傷つけると言われています。活性酸素は呼吸により酸素を取り込むことで発生させていますが、体内の酵素により無毒化されます。しかし、ダイオキシンやホルムアルデヒドなどの化学物質、ヒ素やカドミウム、アスベストなどの有害物質、放射線、紫外線、電磁波、喫煙、激しい運動、ピロリ菌、ストレスなどの影響によって、体内では処理できないほどの大量の活性酸素を生じると、無毒化できず、遺伝子を攻撃することがわかっています。活性酸素はがん以外にも、さまざまな病気や老化に関わっているとされています。

しかし一方で、活性酸素は体内に侵入した細菌やウイルスを撃退したり、細胞内で情報伝達をするのに必要なものでもあるのです。

原因2.ウイルス

遺伝子が傷つく原因の2つ目は、がんウイルスによるものがあります。がんウイルスは遺伝子を傷つけるというよりは、細胞にがんウイルスが入り込み、ウイルスの遺伝子を細胞のDNAに組み込んでがん化させるというものです。
ウイルスは自ら増殖することができないため、細胞に自らを感染させることで増殖する力を手に入れるのです。

がん化を助長させるものは?

加齢や免疫機能の低下は、がん化を助長させることにつながります。

加齢

細胞は分裂する際にDNAがコピーされ、新しい細胞に格納されます。しかし加齢により細胞の分裂が長く繰り返されていくことで、ミスコピーが起こりやすくなるのです。
ミスコピーが起こると、間違った遺伝子情報や意味不明な暗号を持った細胞が増え、がん化を引き起こすことになります。

免疫機能の低下

若くて健康な人でも毎日数千個の異常な細胞が生まれていると言います。それでもがんにならないのは、免疫機能の働きにより異常な細胞が排除されるようになっているからです。
しかし、様々な要因によって免疫機能が低下していると、異常細胞は免疫の監視をかいくぐり、分裂を繰り返して、何年もたってがんとして表に現れてくるのです。

家族性(遺伝性)がんの遺伝子

ある特定のがんにかかりやすい体質が、遺伝することがあります。それは、ある異常な遺伝子が親から子へと引き継がれるためです。

乳がんや大腸がん、メラノーマ(悪性黒色腫)などの遺伝性がんに関係する遺伝子は、これまで数種類見つかっています。下記の表に記された遺伝子を受け継いでいると、そのがんを発症するリスクが高まります。
欧米では遺伝子診断でこれらの遺伝子に変異が認められた場合には、予防のために該当する臓器をあらかじめ切除することがありますが、日本ではまだ一般的ではありません。

家族性がんについて心配される場合、遺伝子の専門の医師や専門のカウンセラーがいる病院(国立がん研究センターなど)に行かれることをお勧めいたします。

まとめ

細胞のがん化は遺伝子が関係していることをお話させていただきました。

遺伝子が傷つく原因などから、がん予防の可能性が見えてくると思います。
私の予防試算として、禁煙と食生活の改善で60%、これにウイルス感染予防ワクチンを加え70%。更に免疫を向上させ、活性酸素を除去することで80%はがんを予防できるのではないかと考えます。残り20%は家族性がんの遺伝子治療やがんワクチンによる今後の可能性によるところです。
予防については改めてお伝えしたいと思います。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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