核酸医薬―サイトモックス

CDC6遺伝子の働きを抑える治療とがん抑制遺伝子を導入する治療。
2つの治療の相乗効果で効率的にがん細胞をアポトーシスに導き、遺伝子機能を回復させてがんの抑制を目指します。

核酸医薬―サイトモックスによるがん治療

多くのがんに過剰発現しているCDC6タンパクに着目

私たちの体はおよそ60兆個の細胞からできています。それらの細胞は常に分裂し、老化した細胞やDNAが損傷した細胞と置き替わることで、生命活動を維持しています。

1つの細胞が2つに分裂する過程を細胞周期といいます。細胞周期は4つの時期(G1期、S期、G2期、M期)に分けられ、それぞれの時期に精緻で複雑なタンパク質のネットワークによって、細胞分裂が無事に成し遂げられています。

細胞分裂の際にDNAの複製はとても重要なプロセスです。1つの細胞周期に確実に1回の複製が完了するよう厳密な制御体制ができています。特にCDC6遺伝子から合成されたCDC6タンパクが中心的な役割を果たしていることが知られています。正常な細胞はDNA複製の準備のため、G1期にCDC6タンパクが1度だけ合成され、S期に入ると不活化し分解されていきます。

しかし、がん細胞では細胞周期中にCDC6が存在しており、様々な種類のがんで高レベルに検出されていることが報告されています。CDC6の過剰発現は、DNAの過剰複製やがん抑制遺伝子の働きを妨げます。そして、細胞の自ら消滅するアポトーシス(プログラムされた死)というメカニズムが働きにくくなり、がん細胞として増殖し続けます。

そこで、CDC6遺伝子機能を制御してCDC6タンパクを産生させないことが、重要になってきます。

RNAi技術で細胞を増殖させる因子“CDC6”をノックダウン

CDC6タンパクが作られないようにするためには、RNA干渉(RNAi)技術を利用する必要があります。

RNAi技術とは、特定の遺伝子からタンパクなどの遺伝子産物を細胞から出さないようにする手法です。1998年にA.ファイアーとC.メローによって発見され、2006年にノーベル医学生理学賞を受賞された技術です。

DNAにはCDC6の遺伝情報がコードされており、その情報はDNAから作られるメッセンジャーRNA(mRNA)に転写され、そこからCDC6タンパクが合成されていきます。
そこで、CDC6遺伝子の情報を抑えるために、RNAi技術を使いshRNA(ヘアーピン型RNA)を細胞内に導入することで、CDC6の遺伝情報をもつmRNAが特異的に分解され、CDC6タンパクの発現を抑制することができるのです。

RNAi技術を用いて特定の遺伝子の発現だけを抑制することは「ノックダウン」と呼ばれています。一方、CRISPR-Cas9などのゲノム編集技術は遺伝子機能を完全に除去するので、通常「ノックアウト」と呼ばれています。

画期的な微小胞エクソソームベクターを用いた核酸医薬―サイトモックス

RNAi技術を使った核酸医薬は、タンパク質を標的に作用する低分子抗体薬とは異なり、タンパク質が産生される段階のmRNAなどの核酸を標的にして作用するため、標的に対する特異性が高く副作用が少ないため、次世代の医薬品として期待されています。

しかし、RNAi技術による核酸医薬は血液中の酵素に容易に分解されてしまうため、患部局所まで安定的に薬剤を届けるドラッグデリバリーシステム(薬物送達技術)の開発が不可欠です。つまり、標的まで薬を何で運ぶかがとても重要であり、優秀なベクターの開発が核酸医薬を実用化する上での鍵になります。

J.E.ロスマン、R.W.シェックマン、T.C.スドフにより、細胞内での小胞輸送の仕組みと主要な輸送システムを解明され、2013年にノーベル医学生理学賞を受賞されました。

サイトモックスはこの仕組みを技術化することに成功した核酸医薬です。レンチウイルス感染細胞から分泌された微小胞エキソソームに、CDC6をノックダウンさせるshRNAを内包させてベクターにした、理想的なドラッグデリバリーシステムです。

  • サイトモックスは、レンチウイルスの遺伝子を含まないので、従来のウイルスベクターが持っている僅かな危険性を回避できるベクターです。
  • 従来、1つのベクターは1つの細胞しか感染できなかったが、サイトモックスは多くのがん細胞に取り込まれます。
  • サイトモックスは脂質、二重膜に包まれているので、分解されにくく長時間血中に存在できるので、より多くのがん細胞を修復できる。
  • CDC6shRNAの他に、p53, p16, PTEN等のがん抑制遺伝子も導入することにより、更なるがんの治療効果と再発予防に役立てることが期待できます。

※p53抑制遺伝子
遺伝子の守護神と呼ばれているp53は、細胞ががん化しないようにさまざまな指令をだしています。例えば損傷を受けたDNAの修復や、修復不能なDNAの細胞をアポトーシス、増殖盛んな細胞の周期を制御しています。がん患者の約半数にp53の変異が確認されています。

※p16抑制遺伝子
p16遺伝子は正常細胞ではほとんど発現していませんが、多くのがん患者にp16遺伝子の変異、欠損、活性の停止がみられます。p16はp53とは別のルートで初期の細胞周期を停止させ、また、細胞を老化に追い込むなどがん抑制に重要な役割を担っています。

※PTEN抑制遺伝子
細胞の中にあるAkt酵素は細胞分裂をコントロールしていますが、Aktが過剰に活性化すると細胞はアポトーシスを回避してがん化していきます。このAktの働きを阻止するのがPTEN遺伝子です。正常に働くPTENを導入することにより、Aktを制御し、アポトーシスや増殖抑制力を回復させます。

※サイトモックスは日本、中国、台湾で特許を取得された技術で製造されています。

治療の流れ

1. 初診

患者さまのがんの情報や治療歴、現在の身体的情報などを詳しくお伺いし、サイトモックスを使った核酸医薬やがん抑制遺伝子によるがん治療についてご説明いたします。患者さまと相談しながら、投与方法や治療スケジュールを決めていきます。

2. 投与

腫瘍内に直接投与、もしくは点滴投与。がんの部位や患者さまの状態により投与方法が異なります。
投与後1時間ほど、院内で安静にしていただきます。

治療スケジュール例
  • 局所制御の例
    通常1週間に1回投与を6回繰り返します。合計6回投与が1クールです。
  • 全身制御の例
    通常1週間に2回投与を3回繰り返します。合計6回投与が1クールです。

3. 経過観察

1クール終了直後にQOLの評価を行います。
さらに、1クール終了1ヶ月半後に再びQOLの評価を行い、イミュノグラム検査や腫瘍マーカー、画像診断を基に治療の評価を行い、今後についての計画を患者さまと相談しながら決めていきます。

副作用

治療直後、一時的に発熱することがあります。また、稀に注射部位が一時的に赤く腫れることがあります。投与前にロキソニン錠などを服用します。

治療を受けられない方

妊娠中の方・未成年の方

治療費

(税込)

初診料 5,500円
サイトモックスによるがん治療
※CDC6shRNA, p16, p53, PTENを含む。
220,000円(1回投与)
※1クール(6回投与)1,320,000円

※血液検査等の検査費用は、上記に含まれておりません。
※健康保険適用外の診療のため、全額自己負担となります。
※価格は技術の進展とともに、予告なく変更する場合がありますことを、予めご了承ください。