【執筆・監修】 笹田 亜麻子
東京キャンサークリニック院長
医学博士・日本血液学会認定専門医・日本内科学会認定総合内科専門医・
日本内科学会認定内科医・日本医師会認定産業医
私は医師としての仕事の傍ら、7年前よりライフワークとして、ピアノ演奏活動を行っております。
今年3月には、私が2年前から主宰しているピアノの会の、プロ、アマチュアピアニストの仲間達と共にチャリティーコンサートを開催し、お客様から寄せられた募金を、日本赤十字社を通して能登半島地震復興支援のための義援金として寄付させていただきました。自分達が奏でた音楽が、ささやかながらも社会のお役に立てることに、大きな達成感を抱きました。
私が、高校時代に止めてしまったピアノを、27年のブランクを経て再開した当初の目的は、認知症予防のためでした。楽譜を読んで音楽を奏でること、微細な指の動きの調節、繊細な音の違いに気付き対処することなどが、脳の活性化につながるためです。
音楽は、脳の原始的な脳幹と呼ばれる部分から、最も高度な大脳皮質と呼ばれる部分に至るまで、広く活性化させます。そのため、音楽によって、自律神経系、痛みや快楽、幸福感や記憶をはじめとする、実に多くの心身機能が影響を受けます。
そのため、音楽は、認知症予防だけに留まらない、多くの効力を示します。
そこで本日は、音楽が私達の心身へもたらす5つの効果と、その効果を得るためにお薦めしたい曲をご紹介したいと思います。
1.癒し効果、痛みを和らげる効果
お薦めの曲:1/fゆらぎを持つ曲
1/fゆらぎとは、規則性と不規則性が調和した状態で、小鳥のさえずり、波の音など自然界に多く存在します。 1/fゆらぎを持つ曲として、よく知られているものの一部をご紹介すると、バッハのG線上のアリアや、シューマンのトロイメライ、ドビュッシーの月の光など、誰もが心穏やかになれる曲です。
当院では、1/fゆらぎ持つ曲をBGMとして流しています。
医療処置中や待ち時間にこのような音楽を聴くことで、不安や痛みを和らげることができます。
2.心を活気づける
お薦めの曲:自分の好きなポジティブな曲想を持つ音楽
ジョギングのお供に適するような、1分あたり120拍前後の曲がその例で、よく知られるポピュラー音楽では、ZARDの負けないで、AKB48の恋するフォーチュンクッキーなどがあるようです。そこまで速くなくても、モーツァルトのトルコ行進曲やアイネ・クライネ・ナハトムジーク、ショパンの子犬のワルツなど、明るい曲想のクラシックもお薦めです。皆さんそれぞれにお好みのパワー曲をお持ちなのではないでしょうか。
3.記憶を蘇らせる
お薦めの曲:若い頃に聞いていた曲
音楽は過去の記憶と結びつきやすいという特徴を持ちます。そのため、若く、元気な頃を思い出すことで脳に刺激を与えます。また、認知症の方でも、過去に聞いて覚えた曲は歌ったり演奏できたりすることがあるため、自信回復につながります。学生時代など若い頃に好きだった曲、歌ったり演奏したりしていた曲、流行っていた曲などがお薦めです。
4.感情や思考を共鳴させる、コミュニケーション手段
お薦めの曲:合唱曲、合奏曲
同じ曲を一緒に歌ったり、演奏したりすると、感情が共鳴し連帯感が形成され、集団の和を保つことができます。校歌や応援歌もそのような効果があり、集団でのコミュニケーションがスムーズになるのを助けてくれます。
5.身体機能や認知機能の活性化
お薦めの曲:一人ひとりの状態や病状、好みに合わせた曲
パーキンソン病という神経の病気には、歩行のはじめの一歩が踏み出せない“すくみ足”という症状があります。ところが、その方の通常の歩く速度に合わせた音楽を流すと、音楽に合わせて第1歩が踏み出しやすくなります。
認知症の方には特に音楽が適しています。認知症の初期症状として、精神的錯乱や自信消失による落ち込みがあります。好きな音楽、過去に好きだった音楽を聴くことにより、イライラや暴言が減ったり、脳の活性化が自信を取り戻すことにつながったりします。
このように、音楽には幅広い心身への効果があります。
また、音楽の聞き方にもコツがあり、ながら聞き、流し聞きではなく、曲に集中することで効果をより高めることができます。音楽と瞑想を組み合わせることで、瞑想による癒し効果、リラックス効果との相乗効果も望めます。
音楽は様々な方法で生活に取り入れることができます。
音楽で心身ともにさらに健康をめざしませんか。
東京 九段下 免疫細胞療法によるがん治療
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