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がん治療を支える補助療法としての高濃度ビタミンC点滴

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【執筆・監修】 阿部 博幸
東京キャンサークリニック理事長

医学博士
一般社団法人国際個別化医療学会理事長

がんの治療の基本は、手術・抗がん剤・放射線治療といった標準治療になります。

一方で、治療の過程で起こる免疫力の低下、倦怠感、食欲不振などに悩む方も少なくありません。
こうした課題に対し、体の機能を支えながら生活の質(QOL)を高める補助療法の一つとして、高濃度ビタミンC点滴療法が自由診療を行う医療機関で取り入れられています。

本コラムでは、その作用機序と科学的背景を中心に、高濃度ビタミンC点滴の特徴をわかりやすく解説します。

ビタミンCの基本的な働き

ビタミンC(アスコルビン酸)は水溶性のビタミンで、人の体内では合成できません。
抗酸化作用をもち、細胞の酸化ストレスを防ぐほか、コラーゲン生成や免疫機能の維持にも関与しています。
「抗酸化」という言葉はよく耳にしますが、これは細胞が‟サビつく”(酸化する)ことを防ぐ働きのことです。
この性質が、がんとの関係を理解するうえで重要な鍵となります。

活性酸素とがん化のメカニズム

私たちの体では、呼吸や代謝、炎症反応などの過程で「活性酸素(Reactive Oxygen Species:ROS)」が自然に生じます。
少量であれば細菌やウイルスの防御に役立ちますが、過剰になると細胞膜やDNAを傷つけ、遺伝子変異を引き起こすことがあります。
スーパーオキシド、ヒドロキシラジカル、過酸化水素などが代表的な活性酸素で、これらが長期間にわたって細胞を攻撃すると、がん化の一因となることが知られています。

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ビタミンCは、このような活性酸素を中和(還元)する代表的な抗酸化物質です。
細胞を酸化ストレスから守り、DNA損傷を防ぐことで、がんの発生や進行を抑える可能性があると考えられています。

高濃度ビタミンC点滴療法とは

ビタミンCは経口摂取でも取り入れられますが、腸から吸収される量には限界があります。
そこで、点滴により直接血中に高濃度のビタミンCを投与するのがこの療法です。
点滴によって得られる血中濃度は、内服と比べて数十〜数百倍にも達するとされます。
この“薬理学的濃度”が、がん細胞に対して特有の作用を示すことが研究でわかってきました。

がん細胞に対する作用機序

ビタミンCには濃度によって二つの異なる作用があります。

抗酸化作用

通常の濃度では、体内の酸化ストレスを和らげ、正常な細胞を保護します。
がん治療中の倦怠感や皮膚炎、口内炎などの副作用軽減に寄与するという報告もあります。

プロオキシダント作用(酸化促進的作用)

高濃度のビタミンCは、体内で過酸化水素(H₂O₂)を発生させ、がん細胞に酸化ストレスを与えます。
がん細胞は抗酸化酵素の働きが弱いため、この酸化ダメージに耐えられず死滅しやすいと考えられています。
一方、正常細胞は十分な防御機能を持つため、影響を受けにくいとされています。

このように、ビタミンCは濃度によって「守る」と「攻める」という、二面性のある特性をもっています。

臨床研究と現時点での位置づけ

1970年代のライナス・ポーリング博士(Linus Pauling)による報告以降、世界各国で臨床研究が進められてきました。
近年では、標準治療との併用により生活の質の改善や副作用軽減を示すデータが増えています。
ただし、高濃度ビタミンC単独でがんを治すというエビデンスは確立されていません。
従って、この療法は「標準治療の代替」ではなく、「補助的な治療」として位置づけられています。

最近の臨床試験の一部をご紹介します。

  • 転移性膵がんの患者34名を対象としたランダム化第Ⅱ相臨床試験では、化学療法に高濃度のビタミンCを併用することで、無増悪生存期間の延長が報告されました。
    Bodeker KL, Smith BJ, Berg DJ, et al. Redox Biol. 2024;77:103375.
  • 神経膠芽腫患者55名を対象とした単群第Ⅱ相試験では、標準化学療法および放射線治療に高濃度ビタミンC点滴を追加した軍で、生存期間の中央値が歴史的対照群(14.6か月)と比較して19.6か月と改善がみられました。
    ただし、対照群を設けていない単群試験であるため、効果の確証にはさらなる検証が必要です。
    Petronek MS, Monga V, Bodeker KL, et al. Clin Cancer Res. 2024;30(2):283-293.
  • 急性骨髄性白血病と新たに診断された高齢者73名を対象に、デシタビンを中心とした化学療法(DCAG)に低用量ビタミンCの静脈内投与(1サイクル10日間、50-80 mg/kg/日)を併用した群(n=39)とDCAG単独群(n=34)を比較した研究では、1サイクル後の完全寛解率(約79.9% vs 約44.1%)および全生存期間(15.3か月 vs 9.3か月)に有意な差が認められました。
    Zhao H, Zhu H, Huang J, et al. Leuk Res. 2018;66:1-7

施術と副作用について

治療は医療機関で、医師の管理のもとに行われます。
一般的には25〜75gを1回として、週1〜2回の点滴が目安です。

施術前には、G6PD欠損症という体質の有無を調べる血液検査が必要です。これは、まれに高濃度ビタミンCが赤血球を壊すリスクを防ぐためです。

重篤な副作用はありませんが、施術中に以下のような症状がみられることがあります。

  • 点滴静脈内注射部位の痛み
  • のどの渇き
  • 低血糖

治療を受けられない方

  • G6PD欠損症の方
  • 腎機能障害の方
  • 栄養状態の悪い方
  • 脱水症状のある方
  • 透析中の方

この治療が向いている人

  • 抗がん剤治療中の倦怠感や免疫低下を軽減したい方
  • 手術後や寛解期に体力の維持・再発予防を目指す方
  • 標準治療を続けながら、体調や生活の質を整えたい方

ただし、標準治療をやめて代わりに行うものではないという点を必ず理解しておく必要があります。

最後に

高濃度ビタミンC点滴は、がんを直接治す治療ではありません。
しかし、体の防御力を支え、日々の生活の質を守るための“補助療法”として、
多くの患者さんの前向きな治療を支えてきました。

体調や健康維持と向き合うときの一つの選択肢として、
主治医とよく相談しながら検討してみてください。

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