動脈にとっても老化細胞の蓄積は有害です

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリ

【執筆・監修】 阿部 博幸
東京キャンサークリニック理事長

医学博士
一般社団法人国際個別化医療学会理事長

「人は血管とともに老いる」―― 英国のヒポクラテスと称されるトーマス・シデナム医師の格言です。

原文は「A man is as old as his arteries.」直訳すると「人は動脈と同い年。」
ということは、動脈年齢が若ければ、実年齢に関係なくその人は(動脈年齢と同じ位)若いと言えるのかもしれません。

血管は全身に張り巡らされており、全身の細胞に酸素や栄養を届けたり、老廃物や二酸化炭素を回収して運んだりしています。体にとって血管は生命線なのです。

血管は大きく動脈、細動脈、毛細血管、細静脈、静脈の5つに分類できます。それぞれ重要な役割を担っていますが、シデナム医師が“血管”と言わずに敢えてarteries―“動脈”と言ったのは興味深いところです。

動脈は静脈などに比べ、生活習慣の結果が如実に表れる血管だからかも知れません。

動脈硬化は老化細胞の蓄積が関与している

動脈は、酸素を豊富に含んだ血液を心臓から全身に送り届ける重要な役割を担っています。

心臓の左部分から始まる大動脈と呼ばれる体の中で最も太い血管が、胸、腹を通り骨盤まで体の中心に伸びています。大動脈の途中から左右に血管が枝分かれして、各臓器や組織に酸素や栄養を届けています。

動脈は加齢とともに硬くなると言われています。これを動脈硬化といいますが、その原因はこれまでは動脈の血管壁に脂質などが蓄積し塊(プラーク)を形成し血管壁が厚くなるためと考えられていました。

最近の研究では動脈硬化の解明がさらに進み、動脈の内側を覆う細胞(内皮細胞)や内皮細胞を覆っている血管平滑筋細胞が、老化して血管壁に蓄積していることが分かってきました。

この血管壁に蓄積した老化細胞は、周囲に炎症を引き起こすことでプラークの形成に拍車をかけ、動脈の内腔を狭めて動脈硬化の進行に大きく関わっていると考えられるようになりました。

こうして動脈が硬くなることで動脈は柔軟性を失い、血液を送り届けることに支障をきたすことになります。これが動脈硬化症と言われる病気につながっていきます。

動脈硬化は今回ご説明したプラークの形成によるアテローム性動脈硬化症の他に、カルシウムが蓄積するメンケベルク内側石灰化硬化症、細い動脈(細動脈)が硬くなり壊れやすくなる動脈硬化があります。

動脈硬化の自覚症状と危険因子

動脈硬化は症状が現れる前から徐々に進行しているので、次のような自覚症状が出たら早めに医療機関への受診をお勧めいたします。

  • 疲労感
  • 動悸、息切れ
  • 胸の痛みや不快感
  • 足が冷たい、しびれる
  • 歩くと足や臀部が痛くなる

また、次にあげる症状や疾患がある方は、動脈硬化を引き起こす可能性が高いと考えられます。

  • 高血圧
  • コレステロール値が高い
  • メタボリックシンドローム
  • 運動不足
  • タバコを吸う
  • 2型糖尿病
  • 加齢

動脈硬化の治療

動脈硬化と診断された場合、病状や症状により次の治療方法が提案されます。

  1. 生活習慣の改善指導
  2. 薬物治療
  3. 手術による血管内治療(プラークの除去、ステント留置)
  4. バイパス手術

動脈硬化の予防

動脈が加齢とともに硬くなるのは避けられないことだと思います。
しかし、そのスピードを緩やかなものにすることは出来ると思います。

対策1.悪玉コレステロールを減らす

  • 過食、高カロリー食を見直す。
  • 定期的な有酸素運動。

対策2.禁煙

  • タバコに含まれるニコチンなどの化学物質が心臓や動脈壁に損傷を与え、プラークを蓄積しやすくなり動脈硬化を促進させます。動脈の健康を保つためには禁煙が重要になります。
  • 対策3.オメガ3脂肪酸の摂取

    • 青魚や野菜、ナッツ類に含まれるDHAやEPAといったオメガ3脂肪酸は抗炎症作用があり、動脈硬化の進行を抑制することを期待されています。
    • また、オメガ3脂肪酸は悪玉コレステロールを減少させ、血中のコレステロールバランスを改善すると考えられています。
    • 対策4.キレート剤による治療

      • キレート剤が血液中や組織中に存在する有害な金属イオンと結合して、それらを体外に排泄させます。この治療は動脈の柔軟性を回復させる可能性があると考えられています。
      • 老化細胞を増やさない生活を心がけよう

        前回の老化細胞のコラムでお話ししたように、「食生活」「肥満」「慢性ストレス」「腸内毒素」「睡眠障害」「慢性感染症」「運動不足」「電磁波」など日々の生活からくる体への負担の蓄積が、正常な細胞を老化細胞へと導くと考えられます。

        老化細胞は体にとっては正常ではない、異常な細胞です。

        老化細胞から分泌されるSASPという炎症物質が周囲に炎症を広げ、動脈硬化を促進していきます。動物実験では老化細胞を除去することで、動脈硬化の進行が抑制されたとの報告があります。

        自分の免疫細胞が活性化していれば老化細胞を排除できるので、老化細胞を増やさない生活習慣、免疫細胞を元気に保つ生活習慣を心がけましょう。

        動脈は体の生命線です。とにかく予防を意識して、気になる症状がある場合は医療機関を受診して、早めに対策を取ることが健康寿命を延ばすことに繋がります。

        このコラムを書いている今は12月に入ったところです。これから寒さが厳しくなります。寒さが動脈硬化に直接影響するわけではありませんが、寒いと血管が収縮して血流が悪くなります。すでに動脈硬化が進んでいる方にとっては、心配な季節ですので体の声によく耳を傾けてお過ごしください。

        笹田先生の寒さ対策のコラムも是非ご参考ください。

東京 九段下 免疫細胞療法によるがん治療
免疫療法の東京キャンサークリニック
tokyocancerclinic.jp


〒102-0072 東京都千代田区飯田橋1丁目3-2 曙杉館ビル9階
TEL:0120-660-075