がん治療には複合的な治療とケアを

希望の持てるがん治療が増えてきましたが、「これだけで治る」という決定的な治療は、残念ながらいまだ存在しません。裏を返せばそれだけがんについて解明されていないことが多く残されているということでもあり、また、がんは他の病気に比べて遺伝子レベルで個人差が大きいからだとも言えるのではないでしょうか。

だからこそ、「しっかり治す」 「再発させない」ようにするために、複合的な治療とケアが必要だと常々考えています。

複合的な治療とは

中心となるがん治療と併用することで相乗効果を期待できる治療や、中心となるがん治療の副作用を軽減する治療になります。

当院でご提案する複合的な治療は、中心となる治療のスケジュール、がんの部位や進行度、患者さんの年齢や性別、身体的問題や状態などから検討していきます。

中心となる治療が手術や抗がん剤、放射線療法の場合、これらは侵襲性が高いため、患者さんによっては免疫機能が著しく落ちてしまうことがあります。

治療によって免疫の力が低下してしまうと、予後が心配になります。
治療が上手くいってがんを取り除くことができたとしても、排除しきれなかったがん細胞が再び増殖し始め、再発という悲しい結果につながることになりかねません。

免疫がしっかり機能していれば、がん細胞を異物と認識して排除してくれるのです。

免疫機能を正しく働かせる治療として、例えば、免疫細胞療法、オンコ・ハイパーサーミア、漢方薬などが考えられます。

ケアとは

がんを退治するための治療とは別に、がんやがん治療が原因で発症する、様々な心体的問題を緩和するために行う治療や手当をケアと位置づけています。

生活の質（ＱＯＬ）に大きくかかわる、痛み、むくみ、だるさ、食欲不振、便秘、睡眠障害、鬱、口腔内トラブルなどといった症状は、積極的に改善させることで、がん治療の効果と再発予防につながると考えられます。

QOL改善のケアを積極的に取り組んでいる医療機関が増えていますので、掛かりつけの病院でのプログラムを利用されることをお勧めします。

我慢強い方がとても多いように感じますが、我慢はしないでください。
ちょっとしたことで生活の質がぐっと上がることもあるということを、覚えておいてください。

自分で身体をいたわり、調整していく

ケアの１つとして、患者さん自身が自主的に行っていただけることもあります。
私からお願いしたいのは、体に備わる免疫がしっかり働くように、これまでの生活習慣を見直していただきたいということです。特に食事、運動、睡眠についてですね。

• アルブミン値は正常ですか？
  もしも低ければ、良質のたんぱく質をしっかりとりましょう。
• 手料理を楽しんでいますか？
  加工品はできるだけ避けましょう。
  塩、醤油、酢、味噌、昆布やカツオなどの出汁を使って、シンプルで素材を生かした家庭料理を楽しみましょう。
• 甘いものは１日にどの位食べていますか？
  砂糖の摂取量を少しずつ減らしていってみましょう。
  おやつは果物がおすすめ。夏場はカットしてそのまま凍らせるだけで、美味しい無添加アイスになります。
• 体を動かしていますか？
  ストレッチ、ウォーキング、ヨガなど自分に合ったものを見つけ、習慣にしましょう。
• しっかり熟睡できていますか？
  早寝早起の朝型生活にして、日中は適度に忙しく過ごし、熟睡できる生活リズムを作りましょう。
• 心にいいことしていますか？
  心を整えることも、がんや治療を乗り越える力になります。
  瞑想や呼吸法の実践、思考の癖を見直すなどして、心が常にすっきりと穏やかでいられますように。
  怒りやイライラなどの感情は臓器に影響を及ぼすと言われています。それでは逆に感謝や喜びの感情も臓器に影響を及ぼすのではないでしょうか。
  感謝の気持ちを込めて体に愛を送るのもいいかもしれません。

まとめ

がん治療にはこれだけで大丈夫という治療はいまだにありません。

がんは病名や病期が同じであっても人によって遺伝子の壊れ方が異なり、Ａさんでは効果がでても、Ｂさんでは効果が出ないといこともあります。

また、年齢やその方の体力によっても、一時的にがんは小さくなったとしても予後が悪く再発や転移に至ることもあります。

そのために、中心となる治療が決まったら、治癒を目指すために足りない部分を補う治療やケアを複合的に取り入れていく、その人に合った個別の治療計画というものが必要になってくると考えています。

今回は私のがん治療の考えをお話させていただきました。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。