免疫細胞療法のメリット、デメリット

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【執筆・監修】 阿部 博幸
東京キャンサークリニック理事長

医学博士
一般社団法人国際個別化医療学会理事長

がん治療の新たな選択肢として認知されつつある免疫療法。

免疫チェックポイント阻害剤やT細胞の遺伝子を改変して作るCAR-T細胞療法の登場で、私たちの体の中にはがん細胞を攻撃する「免疫」という仕組みが備わっているということを、多くの人が意識されるようになったと思います。

そして、免疫療法に興味を持たれた方は色々調べるうちに、これらの免疫療法以外にも様々な免疫療法があることを知り、混乱されていると思います。そう、我々が提供しているような、患者さん自身の血液から製造する多価樹状細胞ワクチンやNK細胞療法などです。これらの治療は前出の免疫療法と混同されないように、あえて「免疫細胞療法」と呼ぶことにいたします。

そこで今回は免疫細胞療法のメリット、デメリットについて考えてみたいと思います。

1.今日来てすぐは治療できません

すぐにでも治療を始めたいとご来院いただいても、残念ながらその日から治療を始めることはできません。 なぜならこの治療は、患者さま自身の血液から細胞を培養して製造する必要があるからです。

培養日数は東京キャンサークリニックでは14日間必要となるので、初日は血液検査用の採血と免疫細胞療法用の採血だけです。治療が開始されるのは採血した日から2週間後になります。

2.薬のような即効性はありません

抗がん剤の場合は、細胞のDNAや特定の分子を標的するように設計されているため、投与するとすぐに薬の作用が現れます。一方、免疫細胞療法、特に多価樹状細胞ワクチンの場合は皮内注射で投与すると、あとは体に備わる“免疫”という生体システムにゆだねることになります。

体の中では次のようなことが起きています;

  • 投与した樹状細胞は免疫細胞のたまり場であるリンパ節に移動。
  • リンパ節で樹状細胞はT細胞やヘルパーT細胞にがんの情報を伝達。
  • がん細胞の情報を受け取ったT細胞は活性化してキラーT細胞となり、
  • さらに、活性化したヘルパーT細胞の刺激により強力な細胞となり増殖を続ける。
  • その後キラーT細胞はリンパ節を離れ血液に乗って全身を駆け巡り、
  • 樹状細胞に教わったがんの情報からがん細胞を見つけだして攻撃開始。
  • がん細胞を攻撃するに至るまで、いくつかのステップが必要なのです。それゆえ免疫細胞療法はゆっくり、そして長く効果が現れます。
  • 従って、自然免疫と獲得免疫を組合わせたハイブリッド免疫療法(多価樹状細胞ワクチン+活性NK細胞)の場合、1クール(約3ヶ月)終了してから3ヶ月後に効果判定を行います。
    ※1クールは、2週間に1回「投与と採血」を5回繰り返します。

3.様々な名称の免疫細胞療法があり、見極めるのが困難

「免疫細胞療法」「免疫細胞治療」「免疫療法」などでネット検索すると、山のようにいろいろな治療が出てきます。どれも同じなような、違うような、よほど専門知識がないと見極めるのは困難です。治療名称は似ていても、製造方法や培養方法はそれぞれ異なります。

そのうえに、“免疫細胞療法には手を出すな”、“お金を捨てるだけだ”など、免疫細胞療法についてネガティブな情報もあります。また、がん情報サイトでも「「自由診療として行われる免疫療法」は、治療効果・安全性・費用について慎重な確認が必要です」と警鐘を鳴らしています。

4.再生医療等の法律で第3種に分類されています

日本では2014年に「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」が施行され、再生医療が安全に実施できるように法律が整備されました。この法律では提供される再生医療のリスクに応じて、第1種、第2種、第3種に分類されています。

免疫細胞療法は治療する患者本人の体細胞を利用し、大きなリスクは想定されないという第3種に分類されています。

免疫細胞療法を提供する施設はこの法律に基づいて、まず再生医療等の提供計画を認定再生医療等委員会に申請します。その委員会で審査され承認を受けることができたら厚生労働大臣に提供計画を提出します。これが受理されて初めて患者さんに治療を提供することができます。

細胞を培養する施設も同様に、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律施行規則(平成26 年厚生労働省令第110 号)」の基準に沿った構造設備であるとして、届出受理された施設でのみ細胞培養加工を行うことになっています。

治療結果について厚生労働省に定期的に報告することも法律の下で行われています。

5.成分採血法-アフェレーシス

ほとんどの樹状細胞ワクチンは、ワクチンを製造するのにアフェレーシスという成分採血を行います。1クールの治療に必要な単球を一度に採取するため、2~5時間ベッドに仰向けの状態で、全身の血液約5000mlを人工透析のように体外に循環させて採血します。体力の無い方や、抗がん剤治療で血管がもろくなっている方には大きな負担となると考えられます。また、特別な装置なので治療を提供するすべての施設に備わっているわけではありません。装置がないところで治療を行う場合は、最初の1回だけは別の医療機関に成分採血に行く必要があります。

アフェレーシスによる樹状細胞ワクチンの場合、採取した単球から一度に1クール分の樹状細胞ワクチンを製造して凍結保存するため、一度に1クール分の治療費が発生します。万一治療が続けられなくなったとしても、治療費は通常戻らないようです。

当院の多価樹状細胞ワクチンは、単球未分化増殖技術という保有する特許技術により、アフェレーシスは行わずに、5分程度の普通の静脈採血で樹状細胞ワクチンを1回分ごとに製造しています。治療費も1回投与ごとになります。

6.健康保険適用外治療

今のところ健康保険が適用されている免疫細胞療法はなく(2022年11月現在)、自由診療として提供されているため、治療費は全額自己負担となってしまいます。

7.免疫細胞療法は全身治療

がんはどこか一か所に見つかったとしても転移する可能性があるため、全身的な病気ととらえて治療することが大切です。免疫細胞療法は分子レベルでがん細胞を攻撃することが期待できるので、全身治療として有用です。

がんの大きさや病気、部位にもよりますが、手術や放射線治療による局所治療と抗がん剤や免疫細胞療法による全身治療の併用が理想的だと考えています。

まだ若くて体力も十分にあるうちは全身治療として健康保険が適用になる抗がん剤が第一候補の治療になりますが、ご高齢の方や将来こどもを授かることを望まれている方には、侵襲性の少ない免疫細胞療法を全身治療としてご提案させていただいています。

8.副作用

自分自身の血液から単球(樹状細胞の元になる細胞)やNK細胞を分離して製造するものなので、副作用はほとんどありません。発熱することがありますが、半日ほどで治まります。また、注射部位が48時間後に免疫反応により赤くなることがあります。

9.まとめ

日本では死因の1位が悪性腫瘍です。

なぜなのでしょうか。

何が真実かは、自分で調べるしかありません。

免疫細胞療法を提供している医療機関では、たいてい無料相談を行っていますので利用されることをお勧めします。無料相談を受ける場合は事前に聞きたいことのメモを作り、分からないこと、不明なことを何でも聞いてみましょう。

がん治療は最初が肝心です。例えば臓器を全摘してしまったら、現時点での医療技術では元に戻すことはできません。自分にとってベストな治療は何なのか、さまざまな医師を訪ねて納得いく治療を選んでください。セカンド・オピニオンを求めることはあなたの権利です。あなたが納得して選んだ治療が抗がん剤であれ、手術であれ、自由診療で行われている治療であれ、あとは医師と病状を確認しまがらポジティブな気持ちで治療に臨んでください。

東京 九段下 免疫細胞療法によるがん治療
免疫療法の東京キャンサークリニック
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