免疫療法でのがん治療なら東京キャンサークリニックの癌治療コラムその他13世紀のフレスコ画にみる「ヒポクラテスとガレノス」

13世紀のフレスコ画にみる「ヒポクラテスとガレノス」

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【執筆・監修】 阿部 博幸
東京キャンサークリニック理事長

医学博士
一般社団法人国際個別化医療学会理事長

イタリアのアナーニ大聖堂のフレスコ画にヒポクラテスとガレノスが描かれています。

2人とも医学の歴史において重要な人物ですが、ヒポクラテスは紀元前5世紀から4世紀に生きた医者であり、ガレノスは紀元後2世紀から3世紀に生きた医者です。異なる時代を生きた2人ですがヒポクラテスを教師に、ガレノスを生徒のようにして1つの場面を描いたこの作品はとても興味深いものです。

ヒポクラテスについて

ヒポクラテスは「医学の父」とも呼ばれる古代ギリシャの偉人です。医療の倫理的実践を神に宣誓した「ヒポクラテスの誓い」で知られるように、ヒポクラテスは倫理的な医療の実践と患者中心のアプローチを提唱しました。

医師や医師を志す学生、医学講師ならヒポクラテスの誓いを一度は読んだこがあると思います。宣誓の中に「私は、私の能力と判断力に従って、患者の利益を考慮し、有害で人を傷つけるものはすべて絶つという処方体系に従います。私は、誰かに頼まれても致命的な薬を与えるつもりはありませんし、そのようなアドバイスを提案するつもりもありません。」という誓いがあります。私も学生時代にヒポクラテスの誓いに感銘を受け、今でも額に入れたギリシャ語の原文を診察室の片隅に置いています。

I will follow that system of regimen which, according to my ability and judgment, I consider for the benefit of my patients, and abstain from whatever is deleterious and mischievous. I will give no deadly medicine to any one if asked, nor suggest any such counsel; and in like manner.

また、ヒポクラテスは医学を科学の領域と捉え、病気の治療に科学的観察を用いて患者の症状と治療に対する反応を注意深く記録しました。この収集したデータを使用して最も効果のある処方を評価し処方しました。

ヒポクラテスはそれまでの宗教的迷信や魔術的なアプローチによる病気の治療から、今日実践されている観察に基づいた科学としての臨床医学の基礎を確立したのです。

ガレノスについて

一方ガレノスは古代ギリシャから古代ローマ時代の偉人です。解剖学と生理学の詳細な研究を行い、多くの解剖図や著作を残しました。ヒポクラテスの教えである患者を観察するという臨床にも力を注いでおり、ガレノスは脈拍を病気の兆候として利用した最初の医者と言われています。現代のように臨床検査機などなかったために、診断の手がかりとして体温や脈拍の変化に注目したのでした。

また、ガレノスはヒポクラテスが唱えた体液説の理論を研究し発展させた、四体液説を広めました。四体液説とは、体には食べ物や環境の影響を受ける血液、粘液、胆汁、黒胆汁の4つの体液があり、これらが人の気質や健康に影響を与えるという理論です。4つの体液のアンバランスが病気を引き起こすと考えられていたため、体液のバランスを回復させる治療法が作られていました。この説は古代から中世にかけて医学理論の基盤となっていました。

ただし現代ではガレノスの医学理論は古典的なものとされ、解剖学においても当時は動物の解剖に基づいて人体構造について推論していたため、しばしば誤りありました。そんなわけで現代においてガレノスに対する評価は様々ですが、医学の歴史において重要な人物であることには変わりなく、その業績は尊重されています。

今日評価される業績として、ヒポクラテスの著作を研究してその理論を継承し発展させ広めたことが挙げられます。ガレノスは多くの著作を残しましたが、その著作にはヒポクラテスの理論を引用したり、解説を加えたりすることでヒポクラテスの遺産を後世に伝える役割を果たしたと言えます。

また、ガレノスのギリシャ語で書かれた著作の数々はラテン語、シリア語、アラビア語に翻訳され、中世から近代と何世紀にもわたり、ヨーロッパと中東の医学教育や臨床に大きな影響を与え、知識を発展させて近代医療の基礎を築いていったと言えます。

ヒポクラテスとガレノスが残したもの

最初にご紹介したヒポクラテスとガレノスが同じ場面に描かれる作品から見えてくるのは、二人の医学における業績への称賛と、ガレノスがヒポクラテスの教えと理論を学び後世に伝えたという事実から、医学はこのように継承、進化してきたという時間の流れを視覚化し、今後の更なる医学の発展を祈念したのかもしれません。

ヒポクラテスの残した医の倫理や臨床医学、ガレノスはそれらを基礎に病気の起こるメカニズムや原因を、解剖研究を通して医学の基礎を築いていきました。連綿と続く医学の探求と進化により、現代に生きる私たちはガレノスが夢見た人体の構造や機能、細胞について知ることができるようなりました。そしてその恩恵を享受しているのです。

フレスコ画を見ていると、35年前に理想の医療を実現するために開業し「患者さんの権利」を掲げ、患者さんのための医療を目指したことを思い出します。もちろん現在も変わらず「患者さんのための医療」を大切にしながら、これからも先人の教えを胸に日々精進して参ります。

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