【執筆・監修】 阿部 博幸
東京キャンサークリニック理事長
医学博士
一般社団法人国際個別化医療学会理事長
ふと気づけば、もう7月。1年の半分が過ぎました。朝の光が強くなり、サルスベリの花が咲きだし始めると、「夏が来るなあ」と思うと同時に、身体が季節に追い付かず少しだけ気だるく感じられる日もあります。
健康の定義について
先日、知人がこう言っていました。
「健康診断は全部A判定だったんです。でも最近、何もする気が起きなくて。仕事には行ってるし、食事もちゃんとしてる。でも、なんというか…元気がないっていうか、“生き生きした感じ”がしないんですよね」
確かに“健康”という言葉を聞くと、まず思い浮かぶのは「病気がないこと」「数値に異常がないこと」かも知れません。でも、それだけで本当に健康と言えるでしょうか?
実は、世界保健機関(WHO)は健康をこう定義しています。
“Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.”
— 健康とは、身体的、精神的、そして社会的に完全に良好な状態であり、単に病気や虚弱でないことではない。
この一文は、よく知られているようでいて、その深さはあまり語られていません。大切なのは、“精神的”にも“社会的”にも良好であること。そして、“単に病気でないだけでは不十分だ”と明言しているところです。
病気がなくても、心が疲れていたら?
一人ぼっちで誰とも話せない毎日なら?
その人は「健康」と言えるのでしょうか。
わたしが医療の現場で出会ってきた人のなかには、がんを抱えている人も、認知症のある人もいました。でも、彼らがふと見せる笑顔や、誰かとの会話に目を輝かせる瞬間には、「ああ、この人はいま“健康”だ」と感じることが何度もありました。
健康とは、検査の結果でも、数値の優劣でもなく、
「その人らしく、生きている実感を持てているか」なのかも知れません。
そのためには、自分が自分の主導権を持って生きることではないでしょうか。
生きることは“選択”の連続です。その選択の結果が今のあなたです。
自分で選択していくということ
日本語に多い同音異義語で勝手に解釈すると、選択は「宣託」(神のお告げ)でもありますので、自分自身(自分自神)としっかりつながり、ピンと来るものを選ぶことなんだと思います。そしてその選択はあなたの心の「洗濯」となり、清々しい気持ちになることでしょう。
何かを選択する時「どちらが正解なのか」を悩むのではなく、「自分の心が一番しっくりくることはどちらか」なのだと思います。世界は色々な考え、解釈、アイデアで溢れかえっており、どれも正しいかも知れないし、正しくないかも知れません。誤解を恐れずに言うと、正解などないのではないでしょうか。しいて言えば、“自分が選択した”という決断そのものが正解で、あとは進むだけです。そしてまた選択、選択と続いていくのです。
人の意見に従った選択や、自分の考えを抑えた選択は、生きる主導権を誰かに明け渡すことにならないでしょうか。
最後に
7月は、季節の移ろいが大きく、心も身体も揺らぎやすい時期です。だからこそ、自分にそっと問いかけてみませんか?
「わたしは、今、“自分らしく”生きているだろうか?」
健康を、数字からではなく、“生きている感覚”から見直してみる。
そんな夏のはじまりがあっても、いいのではないでしょうか。
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