【執筆・監修】 阿部 博幸
東京キャンサークリニック理事長
医学博士
一般社団法人国際個別化医療学会理事長
アロマテラピーとは、精油(エッセンシャルオイル)の香り成分を鼻から吸い込んだり、マッサージによって皮膚から吸収させることで、QOL(生活の質)や自然治癒力を高めようとする療法です。
フランスやイギリスではがんの補助療法として広く認知されています。
がんとアロマテラピー
アロマテラピーはがんの予防や治療にはなりませんが、がんに伴う次のような諸症状の緩和に役立ちます。
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これらの症状を解消するために薬の力を借りることもできますが、即効性はありますが症状によっては薬に依存してしまい、長期的に使用することになると副作用の心配が残ります。一方、植物のもつ薬効成分を利用するアロマテラピーの場合、症状を穏やかに緩和しつつ、エッセンシャルオイルの自然の芳香が心に癒しを与えてくれます。
エッセンシャルオイルについて
植物から抽出されるエッセンシャルオイルには、薬効の高い自然の成分が含まれています。1滴のエッセンシャルオイルには、自然からもたらされた100種類以上の化合物が含まれていると言われています。いくつかのオイルをブレンドすることで、それぞれの成分が反応し相乗効果を上げて穏やかに作用します。
エッセッシャル・オイルには、次のような作用があるものもあります。
- 抗炎症効果で痛みを緩和するもの
- 感染対策に役立つもの
- 睡眠の問題を助ける
- 不安を軽減するもの
- 心拍数や呼吸数を落ち着かせるもの
- 気分を落ち着かせるもの
体内での働き方-気体経路
エッセンシャルオイルを気体として体内に取り入れると、芳香分子が鼻腔や気管支を通り、肺胞から毛細血管へ入り全身を駆け巡り、脳にも伝わります。もしくは鼻腔から嗅神経を通り、直接脳を刺激します。
エッセンシャルオイルをハンカチやテッシュペーパなどに数滴たらして香りをかいだり、ディフューザーを使用するのもいいですね。
体内での働き方-皮膚経路
マッサージで皮膚にトリートメント・オイルを塗布すると、エッセンシャルオイルの成分が角質から真皮に入り、毛細血管へ入っていきます。そして全身を駆け巡り、脳にも伝わります。本能や感情を司る大脳辺縁系を介して、自律神経、ホルモン分泌を司る視床下部に直接働きかけます。
トリートメント用オイルの作り方
東京キャンサークリニックでは、アロマテラピストの長谷川さんにメディカル・アロマテラピーの施術を行っていただいています。
長谷川さんは薬剤師でもあるのですが、アロマテラピーのボランティア活動やアロマケアのボランティア養成活動など、メディカル・アロマテラピーの普及に努めていらっしゃいます。そんな長谷川さんに今回、まずはトリートメント用オイルの作り方と注意点について教えていただきました。
トリートメント用のオイルは、症状別に数種類のエッセンシャルオイルを組み合わせ、希釈用のオイルと一緒にブレンドして作るそうです。
一般的には1~5%濃度で作りますが、敏感肌の人は濃度0.5%がいいでしょう。がん患者さんの場合は濃度1%かそれ以下で作ることを推奨されています。
1%濃度のトリートメント・オイルを作る場合の分量は次の通りです。
キャリアオイル 30ml
エッセンシャルオイル 6滴
エッセンシャルオイルの注意事項
- 原液で皮膚に塗布することができるエッセンシャルオイルが数種類ありますが、病中の方や虚弱体質の方には原液での皮膚塗布はお勧めしません。エッセンシャルオイルは必ずキャリアオイルと混ぜて、濃度を守って使用しましょう。
- キャリアオイルで希釈したものでも、パッチテストを行い、皮膚の薄い部分には塗布しないよう注意してください。
- 内服は決して行わないでください。
むくみや浮腫のためのトリートメント用オイル
次に長谷川さんにむくみや浮腫をひかせるためのエッセンシャルオイルについて伺ったところ、ジュニパー、パチュリー、ゼラニウム、サンダルウッド、サイプレスといった種類をご紹介いただきました。
これら利尿作用のあるエッセンシャルオイルを使い、定期的なトリートメントを行うことで、血液とリンパ循環系を改善することが期待できます。
がん患者さんのむくみや浮腫をひかせたいときの長谷川さんのブレンドレシピを2つご紹介いたします。
むくみや浮腫をひかせたいとき①
ジュニパー 3滴
ゼラニウム 3滴
スウィートアーモンドイオイル 30ml
- ジュニパーに含まれる成分により、妊娠中や急性の腎臓病や肝臓病を患っている場合は使用しないでください。
むくみや浮腫をひかせたいとき②
パチュリー 2滴
サンタルウッド 3滴
ゼラニウム 1滴
スウィートアーモンドオイル 30ml
- サンタルウッドは緩やかな利尿作用なので、病床の方のむくみのトリートメントによく使われるそうです。
人の内なる自然治癒力
ヒポクラテスは「私たち一人ひとりの内にある自然治癒力は、健康になるための最高の力である。」と言っています。
“The natural healing force within each of us is the greatest force in getting well.” -Hippocrates
今回ご紹介したアロマテラピーの他に、森林浴、瞑想、運動、創作活動など自分にあった方法で、安定した心の状態や前向きな気持ちに導き、自然治癒力を高めていきたいものです。
自分の内なる自然治癒力は、がん治療の効果や治療後の回復の助けになるでしょう。
話はそれますが、私どものがん治療の柱の一つである免疫細胞療法は、簡単に言ってしまえば患者さんの血液から得た細胞を培養・加工して製造し、それを医師が患者さんに戻すという治療です。あとは、患者さんの体の中の「免疫」という仕組みにゆだねられ、「免疫」のがん細胞を攻撃する仕組みが働いて、がんを治療していくものなのです。つまり、私たちが直接患者さんのがんを治しているのではなく、患者さんの体ががんを治しているのです。
それ故に、免疫細胞療法は患者さんの自然治癒力を支える治療でもある、と言ってもいいかも知れません。
がんという厄介な病に立ち向かうとき、病魔の根絶を願うあまり、患者さん個人の尊厳を忘れた治療が中心となってしまうことは否めません。医療とは「医師と病気」の戦いではなく、「患者と病気」の戦いであり、ときには「患者と病気」の共存でもあります。
その患者さんをサポートするのが医師であり、看護師であり、セラピストであり、家族であり、友人です。
そして本来医療の目的は、病気を叩きのめすことだけではなく、患者さん自身の自然治癒力を最大限に引き出すことにあるはずです。
患者さんは、自分には治る力―自然治癒力が備わっているということを思い出していただき、どうかその力を十分に発揮できるよう過ごされますように。
東京 九段下 免疫細胞療法によるがん治療
免疫療法の東京キャンサークリニック
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