がん治療とお口のケア

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【執筆・監修】 阿部 博幸
東京キャンサークリニック理事長

医学博士
一般社団法人国際個別化医療学会理事長

皆様は毎日お口のケアにどの位の時間を費やしていますか?
お口のケアにはいろいろな種類があります。

  • 歯ブラシによるブラッシング
  • 歯間ブラシで歯間のお掃除
  • フロスでプラーク(歯垢)の除去
  • 水流洗浄
  • 超音波ブラシで歯垢除去
  • スクレーパーで舌みがき

時間が許す範囲で毎回出来るだけ丁寧にケアすることで、虫歯や歯周病を防ぎたいものです。

特に歯周病は厄介な病気です。

歯周病ががんの原因や進行に関連しているという研究報告が多くでています。歯周病とがんを結び付ける生物学的メカニズムはまだ完全には解明されていませんが、悪玉歯周病菌が体内に入り込み、炎症を引き起こし、それがやがてがんを促進すると考えられています。がん以外にも動脈硬化、糖尿病、アルツハイマー型認知症などの全身疾患とも歯周病が関連していると言われています。

歯周病とは

歯周病は細菌により歯茎や歯を支える骨に炎症を引き起こす疾患です。歯茎の腫れや歯のぐらつきなどの症状が現れます。

正しいお口のケアができていないと、口内の悪玉歯周病菌と言われる細菌により歯垢が形成されます。歯垢は細菌の塊です。放置しておくと炎症を引き起こしたり、やがて石灰化して歯石となります。歯石は通常のお手入れで取り除くことは難しく、歯と歯茎の溝に歯石が定着することで細菌もますます増殖していきます。すると歯茎の炎症は進行し、腫れや出血を引き起こし、さらに歯を支える骨が溶かされてしまい、歯が抜け落ちることもあります。

がん治療とお口の関係

これからがんの治療を受けようとする方や治療中の方は、お口の中の状態を把握し、ケアはより慎重に行う必要があります。

なぜなら化学療法や放射線治療を行う場合、正常な細胞も治療の影響を受けてしまう可能性があるからです。粘膜細胞や骨髄の造血細胞は細胞分裂が活発なため、化学療法や放射線治療でダメージを受けてしまうのです。

そのため、お口の中の粘膜に炎症が起きたり(口内炎)、出血のリスクが高まったり、白血球や血小板、赤血球の数が減少するため感染症と戦う体の力が低下する可能性があります。唾液腺も治療の影響を受ける可能性がありますので、唾液の量が減少することで口内環境が悪化し虫歯や感染症を起こしやすくなります。

がん治療を行う時点ですでに歯周病がある場合は、歯茎の炎症や腫れ、出血と言った具合に悪化してしまう可能性があります。

歯周病のある患者さんや口腔機能の低下している患者さんは、手術や抗がん剤、放射線治療により合併症を起こしやすいことも示されていますので、がん患者さんはお口の中の健康状態をよく把握することがとても大切なことになってきます。

口腔機能の低下とは

食べ物を噛む・飲み込むのが困難になる、口から食べ物をこぼす、硬いものが食べられない、口の中が乾燥する、と言った症状は口腔機能が低下していることになります。

がん治療前後は歯科の受診を

平成24年4月から周術期等口腔機能管理が健康保険診療に導入されるようになりました。

これは周術期(治療前~治療後の一連の期間)に医科と歯科が連携してお口の状態を管理することで、治療によるお口のトラブル予防や治療後の合併症リスクを減らそうというものです。

健康保険で歯科医により口腔機能管理計画が作成され、がん治療までにお口の中の状態が清潔になるよう処置を受け、治療終了後も定期的にお口の中のケアと、なんらかの症状がある場合はその改善のための処置を受けられます。治療を受ける病院に歯科がない場合はその病院が連携している歯科医院にて管理を受けられます。

がんと診断されると頭の中はがんのことで一杯になってしまうかも知れませんが、治療を見据えて早めに歯科医の診察を受けるようにしましょう。

周術期等口腔機能管理は、現在ではがん以外の疾患でも適応が拡大されています。それだけお口の中の状態と全身の健康状態が密接に関係している証です。

お口のケアのポイント

病気を抱えている人であれ、健康な人であれ、定期的に歯科医院でチェックを受けることをお勧めします。自分では丁寧に歯磨きしていると思っていても、意外と磨き残しがあったり、ブラッシングに力を入れすぎて歯茎が下がってしまっていたりすることがあります。

歯科医や歯科衛生士に診ていただき、いろいろアドバイスをもらうことで正しいケアが身につき、お口のケアがますます楽しくなると思います。

がんの患者さんの場合のポイント

  • 治療開始の遅くとも1か月前には歯科医のチェックを受けましょう。
  • 歯科医のアドバイスに従い、毎日正しいケアを行いましょう。
  • たばこやアルコールは避けましょう。
  • 刺激の強い口内洗浄液は避け、水に塩や重曹を溶かしたものを使用しましょう。
  • お口が渇いた状態にならないように心がけましょう。
  • 水分の補給、うがい、糖分を使用しないアメやガムで口内を潤しましょう。
  • カフェインはお口の乾燥につながるので、できるだけ避けましょう。
  • 唇が乾燥する場合はリップクリームで潤いを保ちましょう。
  • バランスの取れた食事を、唾液の分泌を促すようによく噛んでいただきましょう。
  • マグネシウム、カルシウム、リンといったミネラルと、ビタミンC、ビタミンDは歯と歯茎の炎症抑制や健康維持に必要なので、意識的に食事からとりましょう。

主治医となる歯科医とよく相談して、患者さん一人ひとりのお口の状態に合わせたケアをしてください。

お口の健康は全身の健康と密接に関わっているということを肝に銘じて、
毎日欠かさず正しいお口のケアを行いましょう。

東京 九段下 免疫細胞療法によるがん治療
免疫療法の東京キャンサークリニック
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