【執筆・監修】 笹田 亜麻子
東京キャンサークリニック院長
医学博士・日本血液学会認定専門医・日本内科学会認定総合内科専門医・
日本内科学会認定内科医・日本医師会認定産業医
“冷えは万病のもと”と言われるように、血液不良を引き起こし、代謝、内分泌、免疫細胞の働きなど全身の機能を低下させます。
体温が1度下がると、免疫細胞の活性が30%低下するとも言われています。その結果、風邪をひきやすくなるだけでなく、重症感染症、がんなどのリスクが高まります。
そこで今回は、冷えを制し、冬だけでなく1年中、健康に乗り切るためのヒントを、カナダ・モントリオール、北陸など、雪国育ちの私の経験を含めてお話しさせていただきます。
- 1. 体の外から温める
- 2. 体の中から温める
- 3. 体の中から熱を産生させる
冷え対策は、複数のアプローチを組み合わせることが大切です。
そして最も根本的な解決法となるのが、
それでは1つずつ、具体例を挙げてゆきましょう。
1. 体の外から温める
1-1. 3つの首を温める
まず、3つの首(首、手首、足首)を温めるのが効率的です。3つの首の表面近くには動脈があり、全身へ巡る血液の通り道になっています。3つの首を温めることで、全身へ温かい血液を送ることができます。マフラーやスカーフ、タートルネック、手袋やブーツなど、冬のおしゃれに取り入れたいですね。
1-2. 大きな筋肉を温める
次に、大きな筋肉を温めることが大切です。腰、背中や肩などの大きな筋肉が冷えると、血流障害による、こりや痛みの原因となり、腰痛、肩こり、眼精疲労や頭痛など不快な症状を起こします。さらに血流障害が広がると、内臓の冷えや内臓の機能的低下にもつながります。そのため、保温機能のある肌着、腹巻を使うなどの隠れた保温、コートの上にアクセントを兼ねてストールを重ねるなど見える保温を、おすすめします。この保温方法は、夏のエアコン対策にも共通します。
1-3. 肌着は1~2シーズンで買い替えを
最近の保温機能の肌着は、質の良いものも多く、何度洗っても綺麗なままのため、買い替えの時期をつい逃しがちです。しかし、見かけは綺麗でも、繊維は徐々に抜けたり圧縮されたりして、保温機能は確実に落ちてきます。消耗品と割り切り、1~2シーズンで買い替えるとよいでしょう。
1-4. 部屋の湿度を50%前後に
エアコンなどの暖房器具は、空気の乾燥に気を付けましょう。風邪やインフルエンザのウイルスは、乾燥した場所で増殖しやすい特徴がありますが、湿度が40%を超えると、ウイルスの死滅率が高くなるという報告があります。空気の乾燥は、ドライスキン、ドライヘアなど美容の敵でもありますので、部屋の条件にもよりますが、結露やカビを起こさない程度に、湿度を50%前後に保ちたいものです。
先日、我が家の湿度計を見たところ、なんと20%!どうりでドライアイで眼がしょぼしょぼするわけだと思いました。
2. 体の中から温める
2-1. “温 熱性”食材を採り入れる
薬膳の考えでは、体を温める“温 熱性”の効能のある食材と、体を冷やす“寒 冷性”の効能の食材があります。“温 熱性”の食材には、次のようなものがあります。
白ネギ、かぶ、カボチャ、ニンジン、菜の花、たまねぎ、加熱したショウガ、鮭、イワシ、鶏肉、羊肉、エビなど。
とはいっても、一つ一つ覚えるのは大変です。
そこで、“温 熱性”食材のシンプルな判断の方法をお伝えしましょう。
- 冬に旬を迎えるもの
- 寒い地方が産地のもの
- 地面の下で成長する野菜
- 色が濃いもの(黒、赤、オレンジ)
を選ぶことです。その他、
- “発酵”しているもの
これも、体を温めます。
以上のことは、食べ物だけではなく、飲み物にも共通しますので、意識してみてください。
2-2. コーヒー・スパイス・発酵食品・スイーツ
コーヒーは、色の濃い飲み物ですが、コーヒー豆は暑い地方で収穫されるため体を冷やします。私はコーヒーよりも体を温める作用のある、お茶を発酵させて作る紅茶派です。
また、体を温めるスパイスを加える工夫も楽しいです。体を温めるスパイスには次のようなものがあります。
クミン、ウコン、ショウガ、ニンニク、唐辛子、シナモン、ナツメグなど
お料理にもお菓子にも使えそうですね。
発酵食品であり、しかも、唐辛子が入っているキムチに、鶏肉やネギをたっぷり入れていただく“キムチ鍋”、想像するだけで体がホカホカになりますね。
また、白砂糖をたっぷり使ったスイーツは、至福の時をもたらしますね。ただし、白砂糖は体を冷やす作用がありますので、“温 熱性”の飲み物と一緒にいただき、バランスをとるとよいでしょう。
私はスイーツを作るときには、白砂糖ほどは体を冷やす作用を持たない、メープルシロップやハチミツ、キビ砂糖に置き換えています。
3. 体の中から熱を産生させる
私が最も重要視しており、かつ根本的な解決方法になるものです。
体を動かし、血流を良くすること。
筋肉量を増やし、代謝を改善させ、自ら熱を産生させ、自らを温めることです。
3-1. 代謝の役割
代謝とは、生きてゆくために必要な、体内で起こるすべての化学反応のこと。代謝が行われる際には、かならず熱産生が起こります。
代謝には、基礎代謝(約70%)、生活活動代謝(20~30%)、食事誘発性熱産生(約10%)があり、特に筋肉は、基礎代謝の25%以上、生活活動代謝の100%近くを占め、全身の代謝と熱産生で大きな役割を担っているのです。
筋肉からの熱産生を増やすには、体を動かすこと、さらには筋肉を増やす必要があります。
3-2. 日常生活で代謝を上げる
まず、こまめに動きましょう。車よりもバスや電車、自転車や歩行、エスカレーターよりも階段です。
私は毎日ピアノを弾きますので、指先をよく動かす方だと思います。そのおかげで、冷えがちな指先の血流がスムーズになり、家族がしもやけに悩む季節も、私だけは子供の頃からしもやけになったことが1度もありません。
3-3. 意識して筋肉を増やす努力が必要
次に、筋肉を増やしましょう。若い方であれば、日々の生活のこまめな運動で筋肉が自然に鍛えられるのですが、年齢を経るごとに、筋肉は衰退しやすくなります。そのため、若い時以上に意識して筋力トレーニングを行わないと、筋力の維持すら難しくなります。
高齢者ほど、筋肉の材料になるタンパク質を多く摂り(若い世代の1.4倍必要とも言われます)、体を動かし“貯筋”しましょう。
寒さに打ち勝つだけでなく、ロコモティブシンドロームの予防においても、筋力トレーニングはとても大切なのです。
ロコモティブシンドロームとは:加齢に伴う筋力の低下や関節や脊椎の病気、骨粗しょう症などにより運動器の機能が衰え、要介護や寝たきりになったり、そのリスクの高い状態
私は残念ながら運動が好きな方ではなく、子供の頃から筋肉の少ない薄い体形で、極度の寒がりです。今までで一番筋肉がついていたのは、20代半ばの研修医の頃でした。業務が多く、食事の時間もゆっくりとれないほど常に動いていたため、筋肉が自然につき、体つきも今よりしっかりしており、室内であれば1年中半そででも大丈夫でした。
今は、当時とは仕事内容や勤務状況も異なっているため、仕事で自然に筋肉をつけることが難しいため、週1回加圧トレーニングを行っています。1週間にたった30分のトレーニングで十分なため、運動が好きでない私にとっては好都合なのです。特に、大きな筋肉である腹筋を、トレーナーの先生にお願いして多めに鍛えています。同じく大きな筋肉である太もも(大腿4頭筋、ハムストリング)とお尻(大殿筋)の筋肉を鍛えるスクワットと、背筋のトレーニングは、私が希望するまでもなく、毎回必ずメニューに入っています。
3-4. 日常生活で筋肉量を増やす
ジムに通わない方も、歯磨きをしながら、ドライヤーで髪を乾かしながら、ご自宅で1日30回のスクワットを日課として行うとよいでしょう。筋肉量が増えると、代謝が高まり、熱量産生が増え、体の冷えが少しずつ解消するのを実感できます。
一時期話題となった“筋肉は裏切らない!”という言葉がありますが、一時的なものではなく、長年通用する言葉だと信じています。
まとめ
以上長くなりました。お読みいただきありがとうございます。
1, 体の外から温める
2, 体の中から温める
3, 体の中から熱を産生させる
これら多方面からのアプローチを併用して、
皆さんが冷えに打ち勝ち、快適な生活を送られることを願っています。
心身ともにホカホカな一日を!
東京 九段下 免疫細胞療法によるがん治療
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