トマトの力で健康で美味しい毎日を

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【執筆・監修】 阿部 博幸
東京キャンサークリニック理事長

医学博士
一般社団法人国際個別化医療学会理事長

露地もののトマトが八百屋さんで並ぶ季節になりました。昔と違い一年中美味しいトマトが食べられるようになりましたが、取り分けこの時期の瑞々しい深紅のトマトは思わず手に取ってしまいます。

「トマトが赤くなると、医者が青くなる」という諺があるように、トマトは豊富な栄養を含んだ野菜です。

トマトは植物学的分類では果物ですが、食品分類では野菜に分類されます。

リコピン効果

トマトの力を語る上で欠かせないのがリコピン効果です。

熟したトマトの赤色はカロテノイドという植物性色素であり、強力な抗酸化作用をもつ植物性化合物です。トマトには様々な種類のカロテノイドが含まれており、特にリコピンとβ-カロテノイドが豊富に含まれています。

期待できる健康効果

  • 心臓病リスクの低減
    リコピンは血液中の悪玉コレステロールの酸化を防ぎ、動脈硬化を防ぐ働きがあることがわかっています。
  • がん予防
    リコピンは前立腺がんや胃がん、肺がんなどでがん発生率低下との関連が指摘されており、がんリスクを減少させる可能性があることを示唆する研究があります。
  • 目の健康
    リコピンなどのカロテノイドが白内障の発症、加齢性黄斑変性症などの慢性疾患を予防すると報告されています。

リコピンを効果的にとるには

リコピンはトマトの細胞壁に含まれているので、熱を加えることで細胞壁が破壊されリコピンの量が生のトマトに比べてぐんと高まります。

ただし、加熱することによってトマトに豊富に含まれるビタミンCは大幅に減少してしまいます。ビタミンCも補いたい時はピーマンやブロッコリーなどのビタミンC豊富な野菜と一緒に食べるか、ミニトマトを生で食べるのもいいでしょう。ミニトマトは通常のトマトよりもリコピンとビタミンCの含有量が2倍ほどになります。

リコピンは脂溶性なので、生食か加熱に関わらず少量の脂肪と一緒に食べると吸収率が促進されます。

旨味成分のグルタミン酸

トマトには17種類のアミノ酸が特定されています。

アミノ酸はタンパク質を構成する要素なので、細胞構造の維持や組織の成長と修復をはじめ、ホルモンや神経伝達物質の生成、そして免疫の維持に関わっています。それ故、アミノ酸は“生命活動のエネルギー源”として生命維持に不可欠な栄養素と言えます。

トマトに含まれる17種類のアミノ酸の中で、グルタミン酸の含有量が最も高いとされています。このグルタミン酸は“旨味成分”としても知られています。

日本では昆布、鰹節、しいたけなどが料理のダシとして欠かせないように、西洋ではトマトがダシの役目をしています。

料理にトマトを加えることで、豊かで深い味わいを生み出すのはグルタミン酸によるものなのですね。トマトが世界中で愛される秘密がここにあります。

“A world without tomatoes is like a string quartet without violins.”― Laurie Colwin

“トマトのない世界はバイオリンのない管弦四重奏のようなもの”とアメリカの作家、ローリー・コルウィンさんがご著書「Home Cooking」の中で言っているように、その位トマトは料理に欠かせない食材なのですね。

トマトのその他の栄養成分

トマトにはリコピンとアミノ酸の他に、ミネラル、ビタミン、食物繊維、タンパク質、脂肪酸、植物ステロールが含まれています。

ミネラル

トマトには主要ミネラルの呼ばれるカルシウム、カリウム、ナトリウム、リン、マグネシウム、硫黄、塩素と、微量ミネラルと呼ばれる鉄、ヨウ素、亜鉛、フッ素、銅、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、アルミニウム、ヒ素、ホウ素、鉛、カドミウム、硝酸塩、塩素、セレン、ケイ素などが含まれています。

ミネラルは代謝経路の調節、脳や心臓、肺などの生命維持に必要な臓器の形成、呼吸や消化吸収、排泄など身体の生理機能の維持、pHバランスの調節、体液バランス、血圧、神経伝達、筋肉の収縮、エネルギー産生など身体機能に不可欠なものです。

ビタミン

ビタミンは13種類あり、それぞれが身体機能を維持するためにさまざまな役割を果たしている必須栄養素です。ビタミンDとビタミンK2以外は体内で生成できないか、できたとしても微量のため、食事から摂る必要があります。

トマトにはビタミンC,ビタミンA、ビタミンK,ビタミンE,ビタミンB群が含まれています。これらのビタミンにより、抗酸化作用、免疫機能の強化、視力や皮膚の健康維持、血液凝固や骨の健康に役立ちます。

食物繊維

トマトには水溶性食物繊維と不溶性食物繊維が含まれています。普通のトマトで100g中1.0g、ミニトマトで1.4gほどの食物繊維を含んでいますので、日常的にトマトを食べることで消化器系や心血管系の健康維持、血糖値の調整などに多くのメリットがあります。

脂肪酸

トマトには多価不飽和脂肪酸を中心に多種類の脂肪酸が含まれていますが、量は非常に少ないため栄養素としては限定的な役割しかないと言えるでしょう。

植物ステロール

植物ステロールはコレステロール吸収の阻害や抗酸化作用、免疫機能をサポートすることで知られています。

トマトには微量ですが、β-シトステロールとスティグマステロールが含まれています。植物ステロールの効果を期待したい場合は、植物ステロールを豊富に含むナッツや種子、植物オイル、全粒穀物と一緒に食べるのがおすすめです。

 

こうしてトマトについて書き出してみると、トマトは栄養の宝庫だと改めて実感しました。
手頃に手に入り、生でよし、加熱よし、という優秀な食材です。

私はざっくり切って塩とオリーブオイルをかけて食べるのが一番好きです。スタッフに聞いたら毎朝、味噌汁に油揚げと豆腐とトマトを入れて食べているとのことです。

皆さんはトマトをどのようにして食べていますか?
美味しくて体にいいトマトを毎日の食卓で楽しみましょう。

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