【執筆・監修】 阿部 博幸
東京キャンサークリニック理事長
医学博士
一般社団法人国際個別化医療学会理事長
私は昔から朝食によくオートミールを食べていました。オートミールは加工されたオーツ麦をミルクか水と一緒に煮て作ったものですが、寒い時期の朝食にぴったりです。
好んで食べていたオートミールですが、近所に美味しいパン屋さんを見つけてしまい、この数年、朝食は角食のトーストになっていました。
そんな私にオートミールに戻る機会が訪れました。
理由は血液検査でグルコースとHbA1cの値が、看護師さんに心配される位高くなってしまったためです。年末年始にお餅や甘い物を食べ過ぎたのが原因だと思います。そこでこの1月から厳しい糖質制限をしており、甘い物はもちろんのこと、主食となる米やパンも一切断ちました。
しかし主食の米やパンを食事から外すと満足感が得られず、元気がでないなと思っていたところ、オートミールのことを思い出しました。オートミールが2型糖尿病予備軍から何とか抜け出す支えになってくれるはずと考え、1月中旬からオートミール生活を始めました。
この機会に皆様にもオーツ麦のことを知っていただき、特に私と同じ2型糖尿病予備軍の方や糖尿病の方に主食として取り入れていただけたらと思い、オーツ麦についてお話しさせていただきます。
オーツ麦は栄養価が高い食品です
オーツ麦はタンパク質、ミネラル、ビタミンといった栄養素と食物繊維が豊富な、グルテンフリーの全粒穀物です。
玄米や白米に比べてみると栄養価が高く、食物繊維が豊富なことがわかります。
オーツ麦は低GI(血糖指数)食品です
GI(グリセミック インデックス:血糖指数)とは食品に含まれる炭水化物が、その食品を単独で食べた時に血糖値にどの位早く影響を与えるかを数値で示すものです。
純粋なグルコース(ブドウ糖)のGIを100とし、各食品はこれと比較して血糖値への影響を0~100で順位をつけて評価されます。GIの値が低いほど、その食品を食べた後の血糖値の上昇が遅くなります。
オーツ麦やオーツ麦で作られたシリアルのGIは55前後と評価されており、食後血糖値の上昇が緩やかな食品に分類されています。
オーツ麦の加工度により変わるオートミールのGI(血糖指数)
オーツ麦の外側は硬いもみ殻がついているので、市販されているオーツ麦は大抵このもみ殻が取り除かれ、更に調理しやすいように加工されています。
加工の工程によって数種類のオーツ麦が手に入ります。
- スチールカットオーツ(細長いオーツ麦を2,3分割した、加工工程が一番少ないもの。その分調理時間が長くなります。)
- ロールドオーツ(蒸気を当て平たく押された形状のもの。調理時間や味わいなどから私はこれがお勧め。)
- クイックオーツ(蒸気を当て薄く細かく砕かれているので、調理時間が短く済み、時間が無い時に便利。)
- インスタントオーツ(クイックオーツ同様の細かさに加えて、砂糖やドライフルーツなどが入っている。)
オーツ麦の場合いろいろな食べ方がありますが、主食にする場合は水やミルクを加え加熱して、ご飯やおかゆのようにしていただくオートミールと呼ばれるものになります。
クイックオーツやインスタントオーツは便利ですが、これらを使ったオートミールはGIが高く、インスタントオーツについては平均82という評価です。一方、スチールカットのオートミールはGIが平均52、ロールドオーツのオートミールはGIが平均58という評価です。(Am J Clin Nutr 2021;114)
従って、私のように血糖反応を気にする方にとってはロールドオーツがお勧めです。ただし、ロールドオーツであっても長時間煮込み過ぎて粘りが出てしまうとGIも高くなるようですので、調理の際は気をつけましょう。
GIの値による食品分類例
GIの値による食品分類の例を示しますが、食品の産地や品種、製造方法によってばらつきがありますので、それを考慮の上で参考にしてください。
高GI食品(GI:70以上)
体内ですぐに消化され、血糖値の急激な上昇を引き起こす食品。
食品例:精製糖、白いパン、白米、じゃがいも、さつまいもなど
中GI食品(GI:56–69)
消化が遅く、時間の経過とともに血糖値が徐々に上昇する食品。
食品例:玄米、ライ麦パン、雑穀のおかゆ、かぼちゃなど
低GI食品(GI:55以下)
消化が穏やかで、時間の経過とともに血糖値が徐々に上昇する食品
食品例:オートミール(スチールカット)、全粒粉食品、豆類、一部の野菜、バナナ、リンゴ、ヨーグルト、牛乳、豆乳など
オートミールのGL(血糖負荷)は?
2型糖尿病やその予備軍の方にとって、GIが低い食品を選べば安心という訳ではありません。なぜなら食品を食べた時の血糖反応は、血糖値の上昇速度(GI)だけでなく、その食品に含まれる「炭水化物の量」にも依存するからです。
そこでもう一つの指標としてGL(Glycemic Load:血糖負荷)が考案されました。
GLはその食品に含まれる炭水化物の量と食品中の炭水化物1グラム毎に血糖値がどのように上昇するかを示します。
GLの算出方法は、食品含まれる炭水化物の質 (GI)に1 食分の炭水化物量 (g) を掛けて、その合計を 100 で割り算出します。
GLは次のように分類されます。
- 高GL:20以上
- 中GL:11-19
- 低GL:10以下
※GLの1単位は1g のグルコースの血糖効果に相当します。
糖尿病を予防するには1日のGL総量が(85–100)/1000 kcalが適正とも言われています。
さて、オートミールの血糖負荷はどうでしょうか。
スチールカットのオートミールの場合、GLは平均10、ロールドオーツのオートミールのGLは平均12、インスタントオーツのオートミールのGLは平均16という評価です。(Am J Clin Nutr 2021;114)
オーツ麦の加工度によってオートミールの血糖負荷も変わりますが、どのタイプを選んでもオートミールは低から中GLという評価なので安心して召し上がっていただけます。
オーツ麦はβグルカンが豊富です
βグルカン(ベータグルカン)は水溶性食物繊維の一種で、オーツ麦の他に、大麦、きのこ、海藻などに豊富に含まれています。
βグルカンは水に溶けてゲル状の物質を形成し、腸を通過する際にゆっくりと消化されていくため、糖の吸収が遅くなり血糖値の上昇を緩やかにします。
また、消化がゆっくりな分、満腹感も長く保つことができます。
その他にもβグルカンの期待できる健康上のメリットとして、次のことが挙げられます。
- コレステロールの吸収を低減
- 腸内環境の改善
- 便を柔らかくし、排便を促進する効果
- 免疫細胞の活性を高める
オーツ麦は2型糖尿病やその予備軍の方にとって、とても優れた食品であることをご紹介させていただきましたが、すべての方に取り入れていいただきたい食品とも言えますね。
最後に、2型糖尿病予備軍から脱却を試みる私の食品選び
2型糖尿病の方やその予備軍の方にとり、前出でご紹介した血糖指数(GI)や血糖負荷(GL)は食品を選ぶ時の一つの指標になります。しかし、食品を一つ一つ調べるのはとても大変です。そこで私は次のようなことを考えて食品を選ぶようにしています。
- 食物繊維が豊富なもの
- 精製度の低い物
- タンパク質はしっかりとる
- じゃがいも、サツマイモは避ける
- 砂糖を使った甘い物は避ける
好んで食べているのはオートミール、きゃべつ、レタス、肉、魚です。大好物の果物は心を鬼にして控えめにして、甘い物を欲した時に少量を食べるようにしています。
食事制限を始めて2ヵ月ほどが経ちましたが、血液検査で順調に正常値に戻りつつあり、あと一息です。気を緩めず引き続きオートミールを取り入れて、緩やかな血糖上昇を目指した食生活を続けて参ります。
皆様のご参考になりましたら幸いです。
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