細胞を意識した生活を

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【執筆・監修】 阿部 博幸
東京キャンサークリニック理事長

医学博士
一般社団法人国際個別化医療学会理事長

一年の計は立春にあり。

私の今年の計画のひとつは「自分の時間を作る」です。

昨年は公私ともに忙しく、夢の実現のための時間や趣味のサックスの練習の時間をほとんど持つことができませんでした。ちょっと時間ができると頭や体を休め、疲れをとるような生活になっていました。忙しいは心を亡くすと書きます。こんな調子で物事に流され日々を過ごすことは、なんて勿体ないことでしょうか。

そんな思いから今年は計画的に時間を作り、充実した一年にしたいと思います。そのためには疲れにくい体作りをすることも必要だと考え、密かにストレッチを始めました。まずは錆びついた体を柔らかくしようと頑張っています。

皆様の今年の計画は何でしょうか。

どのような計画であっても実行するには体が資本です。その体は“細胞の集まりで出来ている”ということを意識することが大切ではないかと思います。日々の「睡眠」「運動」「食事」を無意識に行うよりも、細胞レベルで意識することで、体にとってより良い選択と行動に繋がり、健康への近道になるかも知れません。

そこで今回は「睡眠」「運動」「食事」を細胞レベルで見てみようと思います。

睡眠

深い睡眠は脳の毒素を洗い流す

睡眠は脳内の有害物質を洗い流すために重要と言われていますが、特に睡眠が深いほど、この洗浄システムが良く機能するという研究結果が報告されています。

脳内の有害物質とは、神経細胞から出た不要なアミロイドβと呼ばれるタンパク質や神経変性疾患に係るタンパク質、脳組織から出る老廃物のことで、睡眠中に脳血管の隣を流れる脳脊髄液が、これらの有害物質を取り除くことで脳の機能を保っています。

アルツハイマー型認知症などの認知症やパーキンソン病などの神経変性疾患は、タンパク質の異常蓄積が原因で発症すると考えられていますが、脳の洗浄システムの機能低下がこれらの疾患の一因である可能性があることも近年の研究で示唆されています。

これらのことから良質な睡眠は認知症などの予防につながり、脳機能を正常に保つのに大切だと考えられますので、睡眠に何かしら問題を感じている方は改善するよう努めましょう。

睡眠中に細胞の修復と再生

睡眠中に分泌される成長ホルモンが、細胞に作用し細胞や組織の修復と再生に重要な役割を果たしています。成長ホルモンはこれ以外にも生命維持に必要な代謝(食物をエネルギーに変えるプロセス)、骨や筋肉の健康維持、そして免疫機能の強化に寄与しています。

24時間周期で変動する生体リズムでみると、午前2時~午前4時頃に成長ホルモンの分泌が盛んになりますので、この時間帯には熟睡していたいですね。

睡眠不足は免疫細胞の機能低下を招く

睡眠が不足するとストレスホルモンのコルチゾールの分泌を増加させます。過剰なコルチゾールは炎症を引き起こし、免疫細胞の機能を低下させてしまいます。免疫細胞の機能低下は免疫システム全体に影響を与え、感染症やがんなどに対する防御力が弱まってしまいます。免疫細胞にしっかり働いてもらうためにも睡眠は重要なのです。

次のことに心当たりがある方は、睡眠の質が良くないかも知れません。

  • 布団に入ってもなかなか寝つけない。
  • 夜中に何度も目が覚める。
  • 夜中に目が覚めるとその後なかなか寝つけない。

どれかに当てはまる方は睡眠について真剣に考えましょう。

運動

運動は体液を循環させ、細胞の代謝に貢献

細胞は水や栄養を取り込み、不要なものを排出することで細胞機能を維持しています。適度な運動はリンパ液や血液が循環することで、細胞が効率的に栄養を取り込み、不要なものを排出するのに役立ちます。

運動はミトコンドリアの増加と活性化

細胞内には生命活動に必要なエネルギーを作り出す「ミトコンドリア」という工場があります。ミトコンドリアの活性温度は37度と言われていますので、低体温だとエネルギー不足となり全身の臓器や組織に支障をきたします。

また、ミトコンドリアは細胞のアポトーシス(自発的な死/プログラムされた死)に関わっていますので、ミトコンドリアが機能しなくなると異常な細胞がアポトーシスされず、細胞のがん化につながってしまいます。

運動することで体温が上がり細胞内のミトコンドリアが活性化すると同時に、運動に必要なエネルギーを供給するために、エネルギー工場であるミトコンドリの数が増加します。

食事

細胞が機能するには「酸素」、「水」、「栄養」が欠かせません。

赤血球が細胞に「酸素」を運ぶ

細胞にとって酸素は細胞の機能を維持するのに必要不可欠です。特に生命維持に必要なエネルギーをミトコンドリアで作るために、細胞は「酸素」を必要とします。

酸素はまず呼吸して体に取り込まれ、血管を流れる血液中の赤血球によって体内の各細胞に運ばれます。そのため全身の細胞に酸素を届けるには、十分な赤血球を確保する必要があります。

赤血球はタンパク質、脂質、ビタミンやミネラルなどから出来ていますので、赤血球を作るためには、良質なタンパク質をはじめとするバランスの良い食事が大切です。

細胞の代謝に必要な「水」

人の体重の約60%が水分で、その内の約2/3が細胞内にあります。細胞内の水は細胞内で行われる様々な化学反応の触媒として、また物質の運搬、栄養の取り込み、老廃物の運搬、温度調整、細胞の形状維持などに重要な役割を担っています。

このように水は細胞の正常な機能維持や生存に必要不可欠なので、適切な水分補給を心がけましょう。

細胞機能と維持に必要な多様な「栄養」

前出の「酸素」のところでも触れましたが、赤血球に限らず全ての細胞は、その機能や構造を維持するためにタンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルなど多様な栄養素が必要です。

年齢、性別、ライフスタイルなどにより必要な栄養や食事の量などは個人差がありますが、細胞機能を最適に保つには、栄養バランスの良い食事を取ることが大切です。また、細胞に負担を掛けないために加工食品は出来るだけ避け、新鮮な食材をシンプルに料理していただくということがとても重要だと言えるでしょう。

いかがでしたでしょうか。日々の暮らしの中で細胞を意識して過ごすのも面白いと思います。
面倒でしたらただ目をつむって足の先から頭の上まで細胞の一つ一つに、日頃の感謝を伝えるだけでもいいと思います。

さまざまな健康法の中から一番しっくりくるものを日々実践していただき、健康で充実した一年をお送りください!

東京 九段下 免疫細胞療法によるがん治療
免疫療法の東京キャンサークリニック
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