腫瘍温熱療法(ハイパーサーミア)は、がん細胞を特異的に死滅させ、免疫活性を高めることが期待できる治療法です。単独でも治療はもちろん、免疫細胞療法との併用により、がんに対する免疫応答の向上をめざします。
腫瘍温熱療法とは
がん細胞は活発に働いているため、健康組織に比べてイオン濃度が非常に高い状態にあり、電気導電率が高くなっています。そのため、熱エネルギーを加えることで、必然的にがん細胞周辺に電流が集まり、ジュール熱が発生しやすくなるのです。ジュール熱とは、電流が流れるとき途中に抵抗があると発生する熱です。
腫瘍温熱療法では、がんの局所深部に非電離放射線よる高周波(ラジオ波)エネルギーを送ることで、「がん」が抵抗となり、ジュール熱を発生させ、がん細胞の機能低下や死滅を促します。
がん細胞は42~43℃で死滅すると言われていますが、温度は1つの指標に過ぎません。
それよりも患部がどれだけ熱エネルギーを吸収したかという「熱量」が、治療の重要な指標になります。
治療で使用するHY-DEEP-600WMは、製造メーカーのAndromedic S.r.l. 社(イタリア)から輸入した医療機器で、日本では未承認となっていますが、ヨーロッパでCEマーク認証を取得しています。
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治療の目的
- がん局所のがん細胞の機能抑制・死滅
がんの種類や症状により、オンコ・ハイパーサーミアを単独治療でがん細胞の死滅、腫瘍の縮小を期待することができます。 - がん免疫細胞療法との相乗効果
体内を過熱するとヒートショック蛋白により「がん抗原」ががん細胞の表面に出るため、がん抗原を特異的に攻撃する免疫細胞療法(多価樹状細胞ワクチン療法)と併用することで、相乗効果が期待できます。 - 血流改善による酸素・薬剤供給の増加
血流が多くなるので、化学療法と併用することで相乗効果を期待できます。 - 免疫細胞の活性化
全身の血流がとてもよくなるという副次的作用により、NK細胞、T細胞やB細胞などの白血球の増加と活性化の促進、樹状細胞の活性化の促進が期待できます。
治療の流れ
初回カウンセリング
初診では、患者さまの病状や治療歴、現在の身体的情報などを詳しくお伺いし、オンコ・ハイパーサーミア治療についてご説明いたします。
治療前の準備
- トイレを済ませてください。
- メガネ、補聴器、アクセサリーなどの金属類は、すべて外してください。
- 携帯電話、腕時計などの精密機器は、ご家族や看護師までお預けください。
- 下着(パンツ)以外は脱いでいただき、治療着に着替えていただきます。
- 皮膚が乾燥している方は、治療の数時間前にたっぷりと水分補給をお奨めします。
治療
- 治療ベッドでアンテナを装着し、患者さまにとって快適な姿勢になっていただきます。
- 温熱装置に腫瘍部位に合わせた設定を行い、治療開始。
- 施術時間は45分~60分です。
治療中
- 医療従事者がそばに付き添っていますので、遠慮をしないで気になることは、すぐにお声かけください。
例えば・・・喉の渇き/トイレ/痛み/ピリピリ感/体調など - 局所温熱ですが、全身の血流がよくなり、汗をかく場合があります。
- 皮膚の状態を定期的に確認させていただきます。
- アンテナには手で触れないようにしてください。
治療回数
基本は1週間に1~2回のペースで10回の治療を1クールとします。
治療目的により治療回数が変わります。
例えば多価樹状細胞ワクチンと併用する場合、ワクチン投与日に合わせて2週間に1回の間隔で行います。
診察の上、治療回数などをご提案させていただきます。
副作用
全身の血流が良くなりたくさん汗をかく場合があります。
脱水症状が起こらないよう、治療中に水分を補給していただくようにしています。
治療を受けられない方
- 心臓電気刺激装置(ペースメーカー)を埋め込みしている
- 埋め込み電極を使用している
- 妊娠している
- 胸水・腹水など水が溜まっている
次に該当する場合は医師にご相談ください
- 生理中
- 体内に金属がある
- ステント留置している
- 治療部分と離れていれば、治療が可能な場合があります。
治療費
(税込)
初診料 | 5,500円 | |
---|---|---|
オンコ・ハイパーサーミア(1回施術) | 22,000円 |
- 健康保険適用外の診療のため、全額自己負担となります。
- 価格は技術の進展とともに、予告なく変更する場合がありますことを、予めご了承ください。
よくある質問
- Q. 温熱をかけられない場所もあるのでしょうか?
- A. 温熱療法は全身に施術することができます。頭や目といった場所も当クリニックで使用している深部温熱装置では施術が可能です。
- Q. 全身温熱と局所温熱とではどちらの効果が高いのですか?
- A. どちらがよいかは、症状や目的により異なります。全身温熱と局所温熱は、がんの種類や症状によって使い分けることが大切なのです。
- Q. 温熱療法だけで、がんを治すことはできますか?
- A. 温熱療法だけでがんを完治させることは難しいと言えます。温熱療法は補助療法の一つと考え、他の療法と併用することで相乗効果が高まるとお考え下さい。