病気のみならず病人を理解し、患者さま本位で治療を組み立てる。
個別化医療とは、治療反応に影響を与える遺伝要因や環境要因を考慮しながら、一人ひとりに合った治療法を提供する医療です。つまり、個々の患者さまに最適化を目指す医療です。
「病気の情報」(画像診断・遺伝子診断など)、さらに「病人の情報」(治療に影響をおよぼすあらゆる要因。仕事や生活習慣、ライフステージ、人生観、家族・経済環境など)の医学的ポートレイトを根拠として、多くの医療資源の中から、個々人により良い治療戦略を組み立てます。
がんは百人百様。だから、がんの個別化医療。
東京キャンサークリニック理事長 阿部博幸は、日本でいち早く「個別化医療」に着目し、国際個別化医療学会を設立して真の意味での「個別化医療 – Personalized Medicine」の概念を広めた医師です。
阿部医師は、がん治療においては特にこの個別化という視点が大切になると考えています。
なぜなら、がん細胞の集団の中でも、遺伝子変異や標的分子の発現などがそれぞれ異なるといった「がんの多様性」があることが明らかになっているからです。
関連コラム「がん細胞の多様性」
つまり同じ病名やステージであっても、がんは百人百様なのです。
そのため、画一的な治療だけでは満足の行く結果を得られないことがあり、一人ひとりのがんにより良い治療法を選ぶことはもちろん、多面的なアプローチによって治療効果を高め、患者本来の力を引き出すことが、がん治療を行う上で重要なポイントと考えています。
「個別化医療」と従来の医療とは、何が違うか?
これまでの医療は、個人の情報を無視した、臨床試験における大規模集団調査の平均的な応答により導きだされる”標準治療”に基づく医療と言えます。
つまり、同じ疾患の全患者に同じ種類の薬剤、もしくは同じ種類の治療というやり方です。
大規模集団調査によって開発された薬剤の臨床試験データは、対象集団の平均的な反応を示しているにすぎません。
従って、処方されたすべての人に有効な反応が示されるわけではありません。
全く効かない人もいれば、効きすぎる人もいます。
しかし、ゲノミクスやプロテオミクス技術、メタボロミクス技術等のバイオテクロノジーの急速な進歩により、分子レベルでの人の疾患研究や診断技術が進展したことで、薬剤の開発や治療法が個々の患者の特徴に応じて、個別化する方法が展開され始めました。
個別化医療とは、これまでの医療とは別のものというよりは、より進化したものだと言えます。
東京キャンサークリニックで実施しているがんの個別化医療とは
①患者さま中心の医療
【病気の情報】と同等に、家族や仕事などの環境、ライフステージル、人生観などを含む【患者さま情報】を重視します。例えば、年齢等の理由で病気と付き合いながら生きることを望む方もいれば、さまざまな事情により、免疫細胞療法などQOLを落とさない治療を優先するほうがいい場合などがあります。
治療の中心に病気の情報だけでなく患者さま情報を加えると、治療の選択肢は変わることもあります。
がん治療はその先の人生を生きるためのもの。治療後も治療前と同じライフスタイルで、そして治療前の人生計画を予定通りに進められるよう、個別化医療に根差した治療計画が大切だと考えます。
②精度の高い豊富な情報量
東京キャンサークリニックでは、治療計画の根拠となる【病気の情報】にも従来以上の精度を求め、バイオマーカーやゲノムなどバイオテクノロジーによるがんの情報収集を行います。
遺伝子レベルの情報は、既存の検査では分からなかったがん細胞のドラッグレジスタンス(一定の抗がん剤に対する耐性)や細胞が癌化した理由(アクセルの効き過ぎかブレーキの故障か)などが分かるため、より確度の高い治療と、再発・転移への対策が可能になります。
③学際的医療
治療計画においてはエビデンスのある豊富な医療資源から、論理的に治療方法を組み立ててゆきます。治療効果を高めることはもちろん、QOLや「生きる力」の維持向上を目指します。